これまで会社関係のトラブルに関するご相談をお受けする中でも、何かしら相続に関わる問題が起因しているという事案がとても多くみられました。
早くご相談にいらっしゃっていれば、そこまで問題が深刻化せずに済んだのではないかみられる事案も多数ございました。
相続に関する話し合いにおいては、それまでの様々な感情から、何ら争いのなかった親族間においても、思わぬ衝突が生じてしまうことも起こり得ます。
相続は誰しも人生の中で多く経験するものではなく、どのように対処したらよいか迷われることは当然のことと思われます。
相続に関しましては、親族間における無用なトラブルの防止又はそれを最小化する観点より、できるだけ早めの段階で専門家にご相談されることをおすすめ致します。
一定の相続人には、民法上、最低限相続できる財産の割合(遺留分)が保障されています。
民法上、遺留分が保障されるのは、相続人のうち以下の方々です。
①亡くなられた方の妻
②子(子が亡くなられている場合にはその子孫)
③子がいない場合には亡くなられた方の親(直系尊属)
※亡くなられた方の兄弟姉妹には遺留分は保障されません。
そのため、遺言や生前贈与によって、遺留分を侵害された相続人は、遺言や生前贈与により相続財産を取得した者に対して、遺留分侵害に相当する金銭の支払を請求することができます(遺留分侵害額請求権)。
2019年(令和元年)7月施行の民法改正により、以前の遺留分減殺請求権が遺留分侵害額請求権に変更され、侵害額の精算は、現物での返還ではなく、金銭での支払に一本化されました。
相続において不公平な分配がなされたという方は、民法において定められた遺留分侵害額請求権を行使することができる可能性がございますので、専門家への早めのご相談をおすすめ致します。
故人により遺言が作成されており、それに従って相続を行う場合等でなければ、親子や兄弟姉妹等の相続人間では、故人の財産である遺産をどのように分け合うか等の遺産分割協議を行う必要がございます。
協議では、故人との関係や相続人相互の関係から、お互いの主張をぶつけ合うだけになってしまったり、他方、言いたいことも言えなかったりなど、話し合いがなかなか進まず、話し合い自体が精神的に重い負担となり、場合によってはそれがきっかけで残念なことに親族間の交流が途絶えてしまうことも起こり得ます。
しかし、専門家である弁護士に間に入ってもらうことにより、弁護士を通した交渉や第三者としての意見を提案してもらうことで、遺産分割協議において親族間における深刻な衝突を回避し、よりスムーズに協議を進めることができるでしょう。
また、相続登記の申請、銀行口座・証券口座の相続手続、相続税の申告等の場面において必要となる遺産分割協議書については、必要な記載を正確に行う必要があるほか、実務上、相続人全員の実印の押印が求められます。
弁護士に遺産分割協議の交渉を依頼するのであれば、併せて遺産分割協議書の作成を依頼してしまうこともできます。
現実的には、遺産分割協議では話がまとまらず、裁判所の手続である遺産分割調停や遺産分割審判によらざるを得ない場合もございますが、これらを弁護士に依頼することで、心理的なご負担も少なく、有利に遺産分割を進めることができます。
会社は、それ自体が法人となりますので、会社所有の財産が相続の対象となる財産に直接含まれるものではありません。しかし、経営者が自身の経営する会社の株式を保有している場合には、当該株式が相続の対象となります。
会社の経営者が、特定の子を跡継ぎとして会社の事業を承継させようとしても、相続においては、前述の「遺留分」があるために、会社事業のスムーズな承継という面からはうまくいかないことがあります。
例えば、経営者が、特定の相続人を後継者として、自社株式や経営者名義の事業用資産を集中的に承継させたいと考え、後継者に対し生前贈与等によって自社株式や事業用資産を譲渡したとします。
この場合、相続の際には、生前贈与された株式や事業用資産についても、相続財産に含まれますので、他の相続人が会社後継者に対して、前述の遺留分侵害額請求権を行使してくる可能性があります。
そのため、会社後継者としては、自社株の価値が上昇した場合等には、請求された侵害額に相当する金銭を支払うために、承継した事業用資産を処分せざるを得ないなどの事態が生じ、円滑な事業承継がなされないおそれがございます。
そのような事態を未然に防止するために、経営承継円滑化法に基づく「遺留分に関する民法の特例」を活用することが考えられます。
これより、会社後継者を含め、推定される相続人全員の合意により、先代の経営者から後継者に贈与等された会社株式及び事業用資産の価額について
①遺留分算定の基礎財産から除外
又は
②遺留分算定の基礎財産に算入する価額を合意時の時価に固定
することができます。
このような会社の相続における対応策については、経済産業大臣の確認や家庭裁判所の許可といった複雑な手続が必要となり、事前の計画的な準備が必須となりますので、できるだけ早めの段階で専門家にご相談をして頂くことをおすすめ致します。
当事務所では、相続に関する訴訟を含め、相続のトラブルに関して豊富な経験を有する弁護士が、ご相談者様の悩みに寄り添う親身の対応をさせて頂きます。
相続におけるトラブルを未然に防止する観点からも、ぜひ当事務所にお気軽にご相談を頂ければと存じます。
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