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下請法が適用される取引とは?!

#下請取引規制

2023.08.25

下請法が適用される取引とは?!

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者が下請事業者と行う取引について、下請事業者保護の観点より、親事業者に対し、代金の一方的な減額や支払日の遅延など一定の行為を禁止し、また、発注書面の交付や取引記録の作成・保存など一定の行為を義務付けています。
もっとも、すべての事業者に対して下請法が適用されるわけではなく、下請法では、同法が適用される取引の範囲について定めています。本記事では、いかなる取引に対して下請法が適用されるかについて解説していきます。

下請法の適用範囲

下請法は、適用対象となる下請取引の範囲について、

 

①取引当事者の資本金(又は出資金の総額)
②取引の内容

 

という2つの基準から定めています。

①及び②の基準にいずれも該当する場合に、下請取引として下請法が適用されることになります。

適用基準①:資本金

下請法では、以下のとおり、下請法が適用される親事業者と下請事業者の資本金額の基準が、下請法が対象とする「取引の内容」(次項で説明します。)に応じて異なることに注意が必要です。

 

【取引の内容】物品の製造・修理、情報成果物の作成、役務の提供

①資本金「3億円超」と「3億円以下」の各事業者間の取引

②資本金「3億円以下1千万円超」と「1千万円以下」の各事業者間の取引

 

【取引の内容】情報成果物の制作、役務の提供

①資本金「5千万円超」と「5千万円以下」の各事業者間の取引

②資本金「5千万円以下1千万円超」と「1千万円以下」の各事業者間の取引

 

以下、上記の適用基準について考察を加えます。

「取引の内容」に拘わらず、下請法の適否が分かる場合

上記基準をみますと、以下のとおり、「取引の内容」に拘わらず、下請法の適用の有無の判断が可能な場合があることが分かります。

すなわち、資本金1000万円以下の事業者は、下請法上の親事業者には当たりません。そのため、資本金1000万円以下の事業者は、親事業者としての規制は受けませんが、他方で下請事業者として下請法により保護を受ける可能性がございます。

また、資本金が1000万円を超える事業者が、資本金1000万円以下の事業者と取引する場合、「取引の内容」に拘わらず、下請法上の親事業者に当たります

そのため、そのような場合には、下請法の親事業者に対する規制に注意が必要です。

 

 【資本金1千万円以下】 ×親事業者

 【資本金が1千万円超】+【資本金1千万円以下と取引】 〇親事業者

資本金額が自社より低い事業者と取引すれば親事業者に該当する基準

加えて、上記基準より、「取引の内容」に応じて一定の資本金額を超える事業者は、自社より資本金額の低い事業者と取引を行う場合には、下請法上の親事業者にあたります。

そのため、そのような場合には、下請法による親事業者としての規制を受けることになりますので注意が必要です。

【①物品の製造・修理】【②情報成果物の作成・役務の提供(※)】

 3億円超

 

 ※プログラム作成、運送、倉庫保管及び情報処理に係るもの

 

【③情報成果物の作成・役務の提供(※を除く)】

 5千万円超

 

 

下請法が適用される「取引の内容」については、次の項目で説明いたします。

適用基準②:取引内容

下請法が適用される「取引の内容」は、大きく分けて、①物品の製造、②物品の修理、③情報成果物の作成、④役務の提供に分かれます。

 

【①物品の製造】

【②物品の修理】

【③情報成果物の作成】

【④役務の提供】

 

次に、下請法の適用を受ける各「取引の内容」について概要をご紹介いたします。

①物品の製造

「物品の製造」の委託を行うものとして、下請法の親事業者に該当しうるのは、

(1)物品の販売を行っている事業者

又は
(2)物品の製造を請け負っている事業者

となります。

 

そのような事業者が、他の事業者に対し、規格、品質、形状、デザインなどを指定して、物品の製造や加工などを委託する場合、下請法の親事業者に該当する可能性がありますので、下請法の規制に注意が必要です。
なお、上記の「物品の製造」は、動産の製造を対象としており、不動産の建築等は含まれません。

 

「物品の修理」の委託を行うものとして、下請法の親事業者に該当しうるのは、以下のようなケースです。

 

(1)物品の修理を請け負っている事業者が、他の事業者に対し、その修理を委託する場合、
(2)自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、他の事業者に対し、その修理の一部を委託する場合

などです。

そのような場合には、下請法の親事業者に該当する可能性がありますので、下請法の規制に注意が必要です。

③情報成果物の作成

「情報成果物の作成」の委託を行うものとして、下請法の親事業者に該当しうるのは、ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の提供や作成を行う事業者です。

 

情報成果物とは、具体例として次のようなものが該当します。

 ・プログラム

 ・映像、音声、音響などから構成されるもの

 ・文字、図形、記号などから構成されるもの

 

また、情報成果物には、物品の付属品・内臓部品、物品の設計・デザインに関わる作成物全般が含まれます。

 

そのような「情報成果物の作成」の委託を行う事業者が、他の事業者に対し、当該情報成果物の作成作業を委託する場合には、下請法の親事業者に該当する可能性がありますので、下請法の規制に注意が必要となります。

④役務の提供

「役務の提供」の委託を行うものとして、下請法が適用されうるのは、
「役務(サービス)の提供を業として行っている事業者」が、他の事業者に対し、
「その提供の行為の全部又は一部」を委託する場合となります。

 

例えば、以下のようなケースが、「役務の提供」の委託に該当します。

・貨物自動車運送業者が、他の運送事業者に対し、請け負った貨物運送の一部を委託する場合。

・自動車メーカーが、自動車整備会社に対し、販売した自動車の保証期間内のメンテナンスを委託する場合。

・ビルメンテナンス業者が、警備業者に対し、請け負ったビルメンテナンスの一部となる警備を委託する場合。

 

そのような場合には、「役務の提供」の委託を行うものとして、下請法の親事業者に該当する可能性がありますので、下請法の規制に注意が必要となります。
 

 

本稿では、下請法の適用に関する基本についてご紹介をさせて頂きました。具体的な場面において下請法の適用の有無について判断を迷われることもあるかと思われます。
また、仮に下請法が適用されるとして、親事業者にはどのような義務が課されるかについてご留意をいただき、監督官庁より思わぬ摘発を受けることのないよう、事前に専門家にご相談いただくことをおすすめいたします。
当事務所では、下請法の遵守を始めとする御社のコンプライアンスの取組みに貢献をさせて頂くことができますので、ぜひお問合せを頂ければと存じます。

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